「シーク」 Society Science and Tech

アメリカのフルーツマーケティング

 フルーツハンターという本を読んだので、印象に残った第3部についてまとめてみようと思います。
この本はカナダでドキュメンタリーが作られNHKで放送が行われていたりします。
この章以外にも好奇心をそそられる部分が多く、魅力的な本ですね。

 

フルーツ・ハンター―果物をめぐる冒険とビジネス

フルーツ・ハンター―果物をめぐる冒険とビジネス

 

 


---アメリカでは商用フルーツの栽培は企業が行っている。

リンゴ市場は90年代に安価な海外産リンゴの輸入によって崩壊した。個人のリンゴ農家は農地を放棄し、企業による生産の統合が進んでいる。
クランベリー栽培を行う企業ではトラクターに似た機械で果実を叩きおとし、掃除機(なようなもの)に吸い込まれベルトコンベアで機械によって分離される。


クランベリー取り扱い大手企業「オーシャンスプレー」のマーケティングイベント、当然製品の加工は全て機械で行われ手作業はひとつもない

 

新しいフルーツが市場に登場するのはどんなとき?
  • 食品メーカーによる新製品の開発
  • 気概のある栽培家による開拓
  • 政府による輸入解禁

輸入解禁はブラックカラントが03年に輸入解禁された際に農場主、加工企業にたくさんの利益をもたらした。またドラゴンフルーツの輸入が07年に禁止されたことで多くの農家が栽培に乗りだしている。

新製品の開発はどう行われているか

60年代に米ではキウイフルーツが大ヒットした。「キウイ」というネーミングはアメリカの出荷業社がつけたものである、ニュージーランドの国鳥にちなんだものだ。
新種を売り出す際なじみやすい名前をつけることと、キャッチフレーズをつけることが重要だ。
ターゲットを決め、なじみのない新種を売り込む必要がある。果物の宣伝文句でよく聞くのは「ささやかな味覚の冒険」「手軽な健康食品」など、モモのキャッチフレーズに「歓喜の爆発」とつけた例もある。


売り込むターゲットはカルフォルニア果樹協会の調査によると「夏好き派」と呼ばれ果物の購入額が平均を上回る人たちだ。アメリカの全世帯の53パーセント程だという。
次が商品を購入する際に原材料を確認するような「快適なライフスタイル派」、その次が2・30代の若い人たちだ。ちなみに髭を伸ばした虚無主義者のような人たちはターゲットに入っていない。
そしてターゲットの好みをマーケティング担当達が調査する。堅さ、風味の強さ、果汁の量、甘さ、食感などだ。それによると最近は大きい果物は好まれないようだ。

新種のフルーツを売り出す人々

通常の宣伝以外に売り込みに重要な役割を果たす人たちがいる、料理人たちだ。

カリスマ主婦「マーサ・スチュワート」はホワイトアプリコットを売り込んだし、有名なカルフォルニアのフェフ「リンジー・シアー」はマイアーレモンを愛用し有名になった。
ゆず、フィンガーライムなども料理人が有名にした果物だ。

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*新商品を売り出すのにカリスマの存在は欠かせない

当たり商品は滅多にない

キウイフルーツのように定番商品になる新種はめったに登場しない。多くの果物がマーケットに惨敗してきた。適切な管理を行い、価格が下がっても収益が出るようにしなければいけないと卸売業者は語る。
またネーミングだけの実態をともなわない商品は(ハネデュー・ネクタリンというような)だまされたとわかったとたん消費者は背を向け、場合によっては2度と戻ってこない。
キウイフルーツの販売促進をおこなうフリーダカプランは18年間 宣伝にかかわり、マスコミに見本を送り、無料試食会をひらき、広告を打ち、農家と協力をしながら、レストランを周りキウイを使ったメニューを取り扱うよう説得を続けている。

 

今後の果物はどうなっていくか?

最近では果物に香料を添加したものがスーパーマーケットに並ぶようになった「グレイプル」である。これはリンゴにぶどうの香料を添加したもので売れ行きは好調だ。

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*一見普通のリンゴだけど食べてみると・・・(写真はこちらのブログから)


他にはカットリンゴが好調だ。機械で加工されたあと殺菌、仕上がりの良さを目的とした薬剤(ネイチャシール)を振りかける。加工食品は大腸菌サルモネラ菌との戦いで新たな添加物も続々と開発されている。

道化師の蝶 感想など

円城塔氏の「道化師の蝶」を読んだので感想など。

本作は着想と言語の関係をテーマにかかれた小説です。それぞれを蝶、友幸友幸(主人公らしい)として話しが進んでいきます。

道化師の蝶

道化師の蝶

 

 

【友幸友幸の獲得したもの】

友幸友幸は世界中を旅しており現地の人の言葉をマネすることで言葉を獲得していきます。

ただ5では(1~5章で構成される)はじめて他人の書いた文章を読むことになります。ここから内的世界らしいものに移行しナバコフとの会話のシーンとなっていきます。

 

言語が他者とのコミュニケーションによって存在していたものから発展し、出会ったこともない他者から文字として情報提供を受け新たなステージへ昇華します。

これは人類が言語から発展した文字を通し獲得した知識の歴史と同様のものではないでしょうか。いわゆるミームというものです。

その結果「猫の下で読むに限る」が無活用ラテン語という人工言語でかかれたというのは面白いですね。

 

人工的に生成された言語がどういった意味合いをもつのか私にはまだわかりません。円城さんの他作品を読み進めれば理解が深まると思います。

 

【印象に残ったシーン】

4の終わりで「わたし」が蝶を捕まえるための網を気まぐれにおばさんに被せるとそのおばさんが友幸友幸になります。本作で一番意外性のあるシーンです。

さらに5では友幸友幸が蝶に姿を変える描写があります。(ここは意見が分かれると思いますが友幸友幸が蝶に変化したという見方と、「わたし」(語り手)が友幸友幸→蝶に移行したという2種類の見方ができます。ここでは前者をとっています)

それまではっきりと分かれていた着想と言語が同じものであるように書かれています。

 

ここでどことなく言語論的転回(注1)を思い出します。

物が存在する→リンゴという名前がついている から

リンゴと名付けられている→リンゴとして認識する

というアレです。

着想と言語は不可分でお互いに補完しあうものである、という作者なりの答えが示されているように私には感じました。

 

 

事前に円城塔さんのインタビューや栗原裕一郎さんの解説(注2)を見ていたので、難解表現に囚われることはありませんでした。

小説的表現と言語に関する考察がはっきり分かれていないのが分かりにくいと感じるの要因かなと思いました。

ただそれがこの作品のよさでもあるのかもしれませんね。

 

(注1)言語論的転回 - Wikipedia

(注2)第146回 芥川賞・直木賞 受賞者記者会見を生放送! - 2012/01/17 18:00開始 - ニコニコ生放送

ビートシートメソッド

*この記事は前記事「ビートシートメソッドについて」の資料です。概要は前記事を参照してください。

 

 

ブレイクスナイダービートシートは、私が遭遇した最高のプロット構造テンプレートです。

それはあなたの全体的な物語のための具体的な目標とし、一口サイズ、管理しやすいセクションにそれぞれ3幕の構造を分解します。

続きを読む

脚本の公式「ビートシートメソッド」について

ニュース系ブログサイト、gigazineハリウッド大作映画がどれも似てしまう原因となる台本作りの「公式」とは?」読んだので感想など。

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この記事では映画脚本を作る際「ビートシートメソッド」という有名な手法があり、どの脚本家もそれに沿って作る為、似かよった展開になってしまっていると批判しています。

またスポンサーも興行の失敗を恐れその手法から大きく外れたものを採用できないとも。

創造性は失われない

ただこの手法に限らず物語にはほぼテンプレートというものが存在し、手法が流行る→飽和→新しい手法というサイクルを繰り返すためビートシートメソッド自体が創作性を失わせるということは無いでしょう。

問題はハリウッドの冒険できないという環境にあり、これの解決法は冒険しやすいローコストローリターンの市場育成が最も早いと思います。

 

ビートシートメソッドとは?

さてビートシートメソッドとはどういうものでしょう?記事には画像しかなかった為、ブレーク・スナイダーの「Save the Cat! The Last Book on Screenwriting You’ll Ever Need」のレビューの英語ブログを探しました。

以下は要約です。

オープニングイメージ
セットアップ -問題の提示
触媒 - 変化の瞬間
葛藤- 変化への恐れ
旅立ち
物語のもっとも楽しい部分-前段がむくわれる
すべてが"グレイト!"なとき-絶頂
最悪の選択
すべてが失われる瞬間
底に落ちそして絶望に
もう一度チャレンジ
フィナーレ

全部はグーグル翻訳を直したものを別ページに載せたのでこちらを見てください。

感想

私が注目した点はそれぞれのビートに何割時間を使っているかという点です。

gigazineの記事では「L.A. ギャング ストーリー(Gangster Squad)」と見比べ

・オープニングイメージ15分/110分 中(全体の13.6%)

・主人公をたしなめる年長者の登場7分/110分中(開始15分時点で登場、全体の6.4%)

・絶望~フィナーレまでラストの20分 /110分中(全体の22.7%)

他の時間について検証できていません、すいません。

 

また脚本のページ数でいうと(全体で110ページ)

1位物語のもっとも楽しい部分 25ページ

2位最悪の選択 20ページ

3位葛藤 13ページ

4位セットアップ、ドン底 10ページ

という配分になっています。

この手法が流行ってる理由として110分という時間に対しおさまりがいい、観客の満足度が高いというのは容易に想像できます。

そうしたとき物語のもっとも楽しい部分に時間を割くというのは納得ですが、最悪の選択~どん底を合わせると30ページになる配分は正しいのでしょうか?ここは検証が必要なようです。

邪馬台国はどこにあったのか?

前回 伊能忠敬の測量について書きましたが、これに伴い古代史の本を読んでいて思ったことなど。

邪馬台国はどこにあるか?】

邪馬台国の場所について代表的な説として「九州説」「畿内説」の二つがある。

魏志倭人伝」の中で邪馬台国の場所について記述があるが、そのままの方位と距離を進むと海のなかに進んでしまうため

・方位を正しいとした九州説

・距離を正しいとした畿内

の有力な2説があります。その後九州説は榎一夫説によって距離も正しくとれるとしています。また距離方角の面以外にも三角縁神獣鏡などの論拠があることも付け加えておきます。

 

【測量について】

伊能忠敬の正確な測量を支えた方法として導線法、交会法、横切り測量があったと書きました。

「導線法」は距離を歩測(または縄などで)距離を測り、曲がり角ごとに角度をはかることで測量を行うものです。

伊能忠敬以前から使用されており田畑の大きさを調べるのに使われたりしました。

ただこの導線法には問題があり距離においてはある程度正確性があるものの、方角については大きくはずしてしまう可能性があります。

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図のように1ヶ所に誤差がある(もしくは間違う)と、あとの曲がり角 距離が正確であってもまったく違う場所を指してしまいます。

さらに誤差が複数あった場合それらが累積され、まったく違う場所を指してしまうことになります。

これをふせぐ方法として「交会法」が使われ、これは目標物からの角度を測るというものでした。昔は山を目標物していたようです。

つまり測定者が正確に距離と方角を記したつもりでも、方角についてはまったく違う場所に出てしまう可能性があるということです。

 

 

以上の理由から交舎法や他の方法で測定していない限り、方位を正しいとした九州説は否定されます。

ただ方位以外の論拠もあったり、当時の方位の測定法も調べないと正しいことはいえません。機会があったらこれらも検証してみたいものです。

 

伊能忠敬の地図作成

測量に以前から興味があり、最近読んだ河出書房新社、渡辺一郎氏の「伊能忠敬の地図を読む」(2000年)を読んだので興味をもった部分をまとめてみます。

 

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【地球の大きさを測る】

49歳になって江戸に渡り、暦学(天文学)を学んだ忠敬は経度を使って地球の大きさを測ってみた。

自宅のある深川から浅草にあった天文台までの経度の差が1分半(360度の60分の1と半分)と計算した忠敬。

では1分の距離を測り「距離*60*360」で地球の円周がわかると考えた。

そこで黒江町~浅草間の距離を測量することした。

その結果から経度1分が1631mと計算した忠敬は師匠の高橋至時へ報告したところ「距離が短すぎ誤差が大きくなる、もっと長い距離でやらなければだめだ。」と返さる。

これが後の蝦夷地測量へとつながることになる。

なお実際の経度1分の距離は1849.2mであり11.8%の誤差であったが、2回目の測量時には1845.63mまで精度を上げている。

 

f:id:dodoria0:20130717001200j:plain浅草の天文台地図(国立天文台図書室)

【測量方法】

測量には主に導線法、交会法、横切り測量が使われた。(それぞれの方法についてはググっていただければ)

また天文観測も同時に行われ、緯度経度の測定がなされた。

これらの方法は当時から知られてはいたが地図作成に使われたのは初めてであった。

 

【地図の書き方】

忠敬の地図には必ず針穴が空いている。これは地図を描く和紙に縮尺を合わせ曲がり角ごとに針穴を空けたせいである。

その後 交会法に用いられた山がかき加えられそこからの実線も描かれている。

非常に正確な作図方法だった。

 

こうして見るとやはり伊能忠敬は当時驚異的な人だったことがよくわかります。

また著者の渡辺一郎氏が、地図作成に他する江戸幕府の厚い後押しは後の50年100年後を見通したものではないだろうかという指摘(実際この地図は明治期以降大活用される)は面白かったです。

明治古典会 七夕古書大入札会2013

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明治古典会主催の古書大入札会 見学してきました。

古書業界1年を通じての最大イベントといえるものだそうです。

2009年に正岡子規の幻の書といわれた「なじみ集」が2千万で出品され、松山市立子規記念博物館が落札しています。

 

ランキングにしてみた

出品物の最低落札額が公式で発表されていますが、カタログに載っていたもの(100万オーバー)を最低落札額順にランキングにしてみました。

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・1位は絵因果経断簡で750万円~

・2位は石川啄木書簡、年賀状 600万円~

・3位は八条院仮名書状集、ちりめん本コレクション 500万円~でした。

(ナリユキ含まず)

傾向として古い年代のもの、近年の有名文豪の直筆は高値が付きやいということでしょうか。

 

見ていて面白いと思ったのは「中原中也書簡」で小林秀雄に金の無心するものでしたが、切実な感じがとても伝わってきました。

高額品に目がいきますが他の方のブログを拝見すると10万円以下のものであれば、入札するとけっこう落札できるようです。